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神奈川わかものシンクタンク 福本塁さん 岡歩美さん(2016年7月)

神奈川わかものシンクタンク 福本塁さん  岡歩美さん

神奈川わかものシンクタンク 福本塁さん 岡歩美さん
「楽しみながら防災意識を高め、普段からのコミュニケーションの大切さを実感してほしい。そんな思いで防災トランプを開発しました」と神奈川わかものシンクタンクの福本さんと岡さん。地域の様々な場面に出向いて普及活動も行っています。その取り組みが認められ、今年3月、消防庁が実施する第20回「防災まちづくり大賞」消防長官賞を受賞。
詳細は「神奈川わかものシンクタンク」のホームページをご覧ください。

 

「防災トランプ」(通常のトランプルールはそのままに、カードに記載されている防災に関するお題について話すと勝ちやすくなるトランプ)を開発した経緯を教えてください。

(福本さん):東日本大震災が発生した直後の3月に、現地医療チームのコーディネーターとしてドクターヘリで南三陸町に赴き、人の命を左右する救急医療活動に従事しました。
 その縁から被災地で支援が行き渡らない方々に絞り復興支援活動を行い、約1年6ヶ月継続しました。個人で活動できるニーズが少なくなってきた頃、かねてから感じていた「次は自分たちの地域で災害が起こるかもしれない」という不安に対し行動しようと防災教育の分野で活動を開始しました。2012年の12月に、僕が被災地で経験したことを伝える「防災サバイバル勉強会」というイベントを行いました。参加者の感想は上々でしたが、参加者が完全に受け身になってしまっていたため、失敗したと痛感しました。僕が被災地で学んだことは「能動性(自分で気づき、考え、行動することを前提に様々な人と協力する態度、姿勢)」でした。失敗した理由はこれが大きく欠けてしまっていたからです。そこで、参加者のひとりひとりが能動的になれる場が必要だと考えました。特に画一的な対策を学ぶのではなく、個々異なる体験や困りごとを素材に話し合うというスタイルで防災を話す仕組みとして開発したのが防災トランプです。

防災トランプで遊ぶことでどのようなコミュニケーションが生まれるのでしょうか。

 防災トランプには52種類のお題が書かれています。例えば「自宅にいるときに強いゆれが起こった」「強風が吹き荒れている」などの自然災害もあれば、交通事故や病気などの身の回りの危険に関するものもあります。ババ抜きや神経衰弱などの通常のトランプルールをそのまま遊べ、上記お題について体験談やニュースを見て考えたことなどを話すと勝ちやすくなるボーナスがもらえます。トランプのスタイルで話をする特徴としては、自分の番は話す番、相手の番は話を聞く番と話し手と聞き手が交互に入れ替わっていくことです。防災を学ぶ場は得意な人がずっと話してしまう傾向が強いため、参加者にとっては防災を考える場でたくさん発言できたと実感することが新しいのかなと思っています。体験談や考えを素材に話し合うことで相手のことを知り、異なる背景や考え方を認め合うことを通じて、災害時に助け合う信頼の基盤づくりにつながると考えています。地域には子どもから年配の方等様々な人がいますから、普段生活で話さない防災について世代をこえて楽しく話し合う場を通じて、家族での話し合いや地域の防災訓練等の具体行動に結び付けていってほしいと思います。

防災トランプ開発のきっかけを伺います

防災トランプ関連で、相模原市内ではどのような活動をしていますか。

(岡さん):毎月第2日曜日に、淵野辺にあるコノマチカフェにて防災トランプを体験できる教室(無料)を開催しています。2012年に活動をはじめてから、現在まで継続して活動し、200回以上場づくりを行ってきました。私はおやこ向けに教室を開いており、子どもたちが話してくれたことを家庭に持ち帰れるように「ぼうさいえほんばなし」にまとめ、地域の大人たちの前で発表してもらう取り組みを行っています。例えば、「風がつよいとどんなことで困るかな」というお題に対して、最初は「黒いのが飛んでくる」という表現だった子どもが、様々なやりとりを経て「昇降口にある大きな黒い植木鉢」と具体的な表現に変化していくなど、子どもたちの変化が見られます。参加後には、具体的に日頃の生活空間や出来事を捉えるようになるのでおやこの会話に防災に関する話を子どもから始めるといった保護者の感想も多く頂いています。
(福本さん):相模原市社会福祉協議会が相模原災害ネットワークと共催している「防災とボランティアの集い」にも参加し、今年は3回目の出展をさせていただきました。今年は、アプリを起動するだけで足下の防災情報(立地情報や災害履歴)が取得できる「ボウサイノハコ」の展示もし、反響を頂きました。
また、防災トランプを使って、ご自身の地域で場づくりを行いたい、または、現在行われている活動に防災トランプを取り入れたいとの声から、プレイリーダー養成講座を行っており、現在128名のプレイリーダーがいます。

つどいの様子
防災とボランティアの集いでの防災トランプ体験の様子

今後の展望を教えてください。

(福本さん):現在の活動を引き続き継続しつつ、新しく挑戦したいことは「外国籍の方」を対象にした取り組みを行いたいと考えています。外国から日本に来て住んでいる方々で、地域のコミュニティに入るきっかけがなく、「防災に関する情報を得られない」という課題を抱えています。防災トランプを活用して地域で情報を得る方法や地域の関係性をつくるきっかけと仕組みを作っていきたいです。
今年の4月から、青山学院大学の淵野辺キャンパスで留学生を対象に「防災減災コミュニティのつくり方」という授業を持ち、英語で教えています。留学生というと、一般的に災害時は弱者になると考えられがちですが、「通訳ボランティアとして活動できる!」等、「できること」を前向きに話してくれます。僕はその熱意と地域を結べるような取り組みを広げたいと考えています。
また、一連の取り組みが評価され、第30回人間力大賞(青年版国民栄誉賞)を受賞することになりました。活動にご賛同頂ける方は是非「20秒で終わるWEB投票」にご支援いただければ幸いです。今後も地道に活動を継続していきます。


インタビューを終えて

相模原市社協では、みんないいひと体験講座として、市内の児童・生徒等の福祉体験講座を開催しています。今後、防災トランプのプレイリーダーさんに、みんないいひと体験講座へご協力いただければとお話をさせていただいたところ、お二人から「ぜひ!」というお返事を頂きました。お二人の熱い思いに、とても感激をしました。

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